今朝、出勤時間。
目の前で人身事故が起きた。
酔っ払っていたらしく、ホームから転落、そこに快速電車が入ってきた。
左足を轢断していたのは確認できた。
「大丈夫ですか!?」
声をかけた。
動かない。
何度も声をかける。
すると体がわずかに動いた。
「生きてる!」
再び意識を失わないよう声をかけ、意識レベルを確認。
引っ張り上げたいけど手が届かない。
車両の反対側から引っ張り出すのも危険。
どうしようもなかった。
轢断された足は、大腿骨が近くに転がり、膝から下の足は1両目の車両が引きずっていた。
血の気も引くような惨状。
最初にこの事態を知ったのは、駅の外からだった。
電車が入ってくるので急いで線路脇の道を走っていた。
すると緊急停止のブザーが鳴り響いた。
ホームに目をやると、人が線路に倒れていて、次の瞬間快速電車がその上を通り過ぎた。
僕は急いで改札を抜け、ホームに走った。
そこには想像してなかった光景が広がっていた。
静まりかえったホーム。
たくさんの人がいるのに、誰も事態に気付いていないかのよう。
僕は電車とホームの間を確認しながら歩いた。
最初に見つかったのは先頭車両に引きずられた足。
落ちた人は電車に轢かれた。そう確信した。
2両目にさしかかると、白いものが見える。骨だ。
太い。恐らく大腿骨。
じゃあこの先に人がいるはず。
すぐに黒い影が見えた。
でもそれが黒い上着だけなのか、体の破片なのかわからない。
スマホのLEDをONにして辺りを照らす。
頭らしきものが見える。上半身だ。
ピクリとも動かない。
そこで僕は「大丈夫ですか!?」と声をかけた。
僕が事故を目撃してホームに立ち、けが人を確認するまでの間、声をかけたのは僕が始めだった。
そのときはとにかく夢中にその人に声をかけ続けていた。
やがて救急隊員と警察官が到着して意識の状態を伝え、そこで周囲に規制線が張られた。
ようやく落ち着き、僕は周囲を見渡して驚いた。
これだけ大けがをしている人が目の前にいるのに、周りの人は会社に「人身事故で遅れます」と電話をしてたり、ツイートしてたり、LINEで友達に実況してたり。
自分のこと以外の無関心さに、なんだか怖い空気を感じた。
こんな時、人は何をしたら良いのかわからないのかもしれない。
僕も実際、何をして良いかわからなかった。声をかけることしか出来なかった。
後で思えば無理矢理でも引っ張り上げて、まず止血をするべきだったと思う。
1時間もの間、寒くて不安な思いをさせてしまった。
目の前で起きたショッキングな事故、そしてその周囲の異常に冷めた空気。
そのギャップに僕は今日1日落ち込んでいた。
自分に落ち込んだのではなく、どうしてこんな世の中になってしまったのかということに落ち込んでしまった。
人はもっと温かいはず。
言葉は時に、毛布の代わりになるはず。
僕はそう信じたい。
仕事帰り、駅員さんにその後の安否を確認した。
残念ながら左足は失うこととなり、頭も若干陥没があったそうだが、命に別状はないとのこと。
よかった。ほんとによかった。
残された命、大切にして下さい。
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